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はちきれることのないブラウスの会、 それは地獄の世に咲いた四輪の花。

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090115_181957.JPG

下の記事でも長谷川さんが申し上げている通り、
はちブラは先日、玉津会館という所で
稽古を致しました。

ただ、稽古の殿堂とも呼ばれる玉津会館、
おいそれと誰でもそこで稽古出来る訳ではありません。
書類選考で実績を、
オーディションで実力、将来性を見極められ、
厳しい審査を潜り抜け、晴れて稽古が出来るのです。

しかし、はちブラメンバーとて万化での歴戦の実績、経験もあり、
その実力は決して余所に劣るものではありません。

事実、オーディション当日のネタ見せも
上手くいったと聞いています。


「チィちゃんのアラベスク、今日も冴えてたね!」
「はるさんの横山弁護士モノマネも最高でしたよ!」
「ま、今日の出来なら合格は間違いないでしょ」

オーディションを終えた安堵感から
四人はいつも以上におしゃべりです。

「あら、えらく騒がしい思えばはちブラの皆さんじゃない」

四人の歩く廊下を、
黒ジャージの集団が立ちはだかりました。

「あんたたち……、
『いきいきぱそこん』の連中!」

『いきいきぱそこん』とは、
「IT演劇」を標榜し、
ここ玉津会館を根城とする新進気鋭劇団です。

「もしかして、あの出来で受かった気でいらっしゃるのかしら。
相変わらずおめでたい方達ね」

「何だと!!」

「ねぇ、彼女たちの合格する確率を計算して差し上げて」

「はいリーダー。(カタカタカタ…)出ました、2.4%です」

「おほほほほ、残念ねぇ」

「この野郎、言わせておけば!」

「相手にしちゃダメよ。行きましょう」

血の気の多い長谷川さんを、
大沢さんが冷静に制し、
そして、いきいきぱそこんの方をギロリとひとにらみ。

「いきいきぱそこんさん。
そんなに突っかかって来る所を見るに、
余程私たちのことが怖いと見えますが?」

「何ですって!?」

『いきいきぱそこん』の面々から俄に殺気が立ち上ります。

「2週間後、またここでお会いしましょう。
ごきげんよう」


そして、合格発表当日、
スタッフが合格者の名前を読み上げ、
壁にそのパネルを掲示していきます。

「2051番、くちなしの会様、……
6537番、玉津作業所様、……」

「私たち、全然呼ばれませんね…」

村井さんが心配そうに呟きます。

「大丈夫、あんなに上手く出来たんだもの、
きっと大丈夫よ」

有元さんは自分に言い聞かすように励まします。

「4035番、いきいきぱそこん様」

いきいきぱそこんの面々がワァと歓声をあげています。

「ああ、もうダメ…」

「それでは最後の一枠です。
……4036番、
はちきれることのないブラウスの会様!」

四人は一瞬何が起こったのか分かりませんでした。
しかし、目の前には確かに漆黒の板に純白の文字で
「はちきれることのないブラウスの会様」と書かれているのです。

「おめでとう、はちブラの諸君」

口ひげをたくわえた老紳士が、
喜ぶ四人に近付いてきました。

「あ、貴方は?」

「ワシは玉津会館館長、玉津栗太郎。
諸君らのオーディションは見せてもらった。
技術はまだまだ荒削りじゃが、キラリと光るものがある。
本番も楽しみにしておるぞ」

「は、はいっ!」

そんな光景を見ていたいきいきぱそこんリーダーが
チッと舌打ちしています。

捨てる神あれば拾う神あり、
彼女たちは地獄で仏に会ったような気分でした。

しかし、これはようやく未来への扉に手を掛けたに過ぎないのです。
まだまだ勝負はこれからなのです。
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